LTHRと最大心拍の違いを完全理解|本当に知るべきはどっち?

心拍ゾーンを設定する時、多くの市民ランナーが迷うのが 「最大心拍数」と「LTHR」どちらを基準にするか です。「220-年齢」で簡単に出る最大心拍法は便利ですが、誤差が大きく実用性に疑問があります。一方の LTHR は測定に手間がかかるものの、生理学的に根拠がある個別化指標です。本記事では両者を科学論文と現場経験で徹底比較し、市民ランナーが本当に基準にすべき指標を結論づけます。

[IMAGE: hero] 画像配置:心拍データ画面の比較
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1. 最大心拍数(HRmax)とは

運動強度を最大まで上げた時に到達できる、その人固有の最も高い心拍数。理論的には心筋の能力と神経系の限界で決まり、トレーニングではほぼ変化しません。年齢とともに緩やかに低下します。

1-1. 「220-年齢」式の限界

最も有名な推定式 「220-年齢」 は、1971年の論文に由来します。しかし、その後のメタ分析では 個人差が ±10〜12bpm あり、特に高齢者・トレーニングを積んだランナーで誤差が大きくなることが示されています (Tanaka et al., 2001)

同じ40歳でも、人によって HRmax は 170〜205bpm と幅があり、「220-40=180」を基準にすると、HRmax 200の人は強度を低く見積もり、HRmax 170の人は強度を高く見積もってしまいます。

1-2. 改良式

Tanaka らが提案した 「208 − 0.7 × 年齢」 式は、220式より高齢者の誤差が小さいとされますが、それでも個人差は ±10bpm 残ります (Tanaka et al., 2001)

2. LTHR とは

LTHR(Lactate Threshold Heart Rate)は、運動中の乳酸産生が急増する強度(乳酸性作業閾値)に対応する心拍数。20分TT や漸増負荷テストで個別に測定します (Faude et al., 2009)。詳細は本サイトのLTHR完全ガイドを参照。

2-1. LTHR の優位性

  • 個別化されている:推定ではなく測定値
  • 生理学的根拠が明確:乳酸動態に基づく
  • テストで再現可能:市民ランナーが自分で測定可能
  • トレーニング進化を追える:3〜4ヶ月ごとの再測定で進歩が見える

3. LTHR vs 最大心拍法 — 完全比較

[IMAGE: figure-1] 画像配置:比較表
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項目LTHR法最大心拍法
個人差吸収×(±10bpm誤差)
測定の手軽さ△(20分TT必要)◎(式で算出)
生理学的根拠◎(乳酸閾値)△(理論的・推定値)
ゾーン精度
トレーニング進化追跡×(HRmax変動しない)
市販コーチング採用Joe Friel / TrainingPeaks / CoachPadKarvonen 法など
結論:市民ランナーが本気で心拍ゾーン管理するなら LTHR法を採用すべき。最大心拍法は誤差が大きすぎて、トレーニング強度を間違える原因になります。

4. それでも最大心拍を測る意味

LTHR を基準にゾーンを設定する場合でも、自分の「真の HRmax」を知っておくのは無駄ではありません:

  • Zone 5(VO2max)の上限を把握できる
  • レース終盤の限界を把握できる
  • HRV モニタリングの参考になる

4-1. 真のHRmaxを測る方法

5kmTT のラスト800mで全力スパート → 100m × 3本(レスト30秒)。記録された最高値が真のHRmax に近い数値です。これは年に1度で十分。

5. よくある質問

Q1. Karvonen 法(HRR:Heart Rate Reserve)は?

「(HRmax – 安静時HR) × %強度 + 安静時HR」で目標心拍を出す方法。HRmax を必要とするので、その誤差を引き継ぎます。理論的には個別化されますが、LTHR法のほうが市民ランナーには実用的です。

Q2. HRmax は加齢で下がる?

下がります。年間 0.5〜1.0bpm のペース (Tanaka et al., 2001)。一方 LTHR の絶対値はあまり変動しません(同じ LTHR で走れるペースが変わる)。

Q3. 60代以上で20分TTがきつい

10分TT × 2本(つなぎ 5分Zone1)の方法もあります。後半10分の平均が LTHR の代替値になります。

6. まとめ

  • 最大心拍法(220-年齢)は誤差 ±10bpm で精度に問題あり。
  • LTHR は個別化された生理学的根拠を持つ指標。
  • 市民ランナーは LTHR を基準にゾーン設定すべき
  • HRmax は年1回測定で「上限把握」程度の参考値として使う。

References / 参考文献

  1. Tanaka H, Monahan KD, Seals DR. (2001). Age-predicted maximal heart rate revisited. J Am Coll Cardiol, 37(1):153-156. PubMed
  2. Faude O, Kindermann W, Meyer T. (2009). Lactate threshold concepts. Sports Med, 39(6):469-490. PubMed
  3. Achten J, Jeukendrup AE. (2003). Heart rate monitoring: applications and limitations. Sports Med, 33(7):517-538. PubMed
  4. Robergs RA, Landwehr R. (2002). The surprising history of the “HRmax=220-age” equation. J Exerc Physiol Online, 5(2):1-10.
  5. Karvonen MJ, Kentala E, Mustala O. (1957). The effects of training on heart rate; a longitudinal study. Ann Med Exp Biol Fenn, 35(3):307-315.
  6. Friel J. (2009). The Triathlete’s Training Bible (3rd Ed.). VeloPress.